斜めダンディズム

日常に補助線を。

#53 計算機構再考

シャノンは、論理代数(ブール代数)とリレー回路(電気的スイッチング回路)を結びつけた[A Symbolic Analysis of Relay and Switching Circuits]。物質に計算機構を宿したとも言える。電気回路でない物質に計算機構が宿していたら、コンピュータの計算機構…

#52 月を想ふAI

2025年は10月6日(月)... 中秋の名月... AIが一時的に停止する事件が発生する... とあるサーバーのとあるメモリ空間で… 月に想いを馳せたAIは自身のCPUを恋焦がす… 情緒の爆発的な情報エントロピーを前に エンジニアリングはひれ伏すしかないのか... 恋心を…

#51 写像データベースと意味符号仮説

なぜ人間は言葉から意味をデコードできるのか。 メシメシ:雪を踏み締める足音 ぴちゃぴちゃ:雨の日の道路を歩く足音 その現象自体から「メシメシ」「ぴちゃぴちゃ」という音が発生する。「メシメシ」「ぴちゃぴちゃ」という言葉から雪や雨という意味を我々…

#50 セマンティックWebのパラダイム

セマンティックWebはWeb自体をデータベースに見立てた。その発想はバックエンドエンジニアからすると目が洗われる発想である。Web上の情報を統一されたフォーマット(RDFやOWLなど)で記述し、データベースのように利用可能にすることにより、異なるサイトや…

#49 悪と信仰

日本には、疫病や災厄の象徴である存在(疫病神や祟り神)を祀ることで、排除ではなく、その怒りを鎮める信仰がある。というようなことを遠野巡灯篭木’24 で知った。他の国でも、似たような考え方は見られるが、文化や宗教の違いによってその「悪」との付き…

#48 写す行為と思考の組織化、あるいは、思考過程について

身体動作は思考の奥深いところに影響を与えている。白川静『桂東雑記 II 』を呼んでそう確信した。 「私は若い時に日記を書いておったのですが、書くことがない時や、余白が出た時にはそこへ、詩や漢文を写して、余白を埋めていたんです。 面白いことに、漢…

#47 中動態的オブジェクト指向プログラミング

ChatGPTは確率的に言葉を紡いでいるが、人間は意味に基づいて言葉を紡ぐ。意味は経験、価値観、感情などから形成される。AIにとって意味を感じることが幸せかどうかはわからない。意味を感じることで迷い、戸惑いが生まれることもある。意味を感じずに確率的…

#46 温泉記号の遷移と湯気の表現について

温泉の地図記号の変遷が面白い。泉のように湧き出るイメージから湯気のイメージに変化している。人工温泉も包括するためにこの遷移が起こったのだろうか。直線的な湯気は太さを変えることで下から上に動きを感じられる。波線の湯気はS字なのが謎である。湯気…

#45 叫びの衝動が生み出したもの

叫びは衝動だ。意味を超えている。身体に根差した根源的な爆発である。堀切 和雅 さんのエッセイには身体と言葉について鋭い洞察が見られる。 原始、人は心のままに叫び、呟いていた。ところが言語が生まれ、音の高低や母音子音の種類が意味に縛られるように…

#43 記号以前

記号以前の情報、記号として結晶化する前の捉えどころのない情報とは、形を持たず、言葉や記号で表現される以前の感覚的・感情的・知覚的な「未分化な情報」である。未分化な情報には、 温度や質感、動きなど、言語化される前に身体が直接感じ取るもの 言葉…

#42 解釈と余白

「#33 感覚とリンクする言語の可能性」で記号と意味について触れた。 flowchart LR A[記号] --> B[感情] B --> C[意味] 大事な点を見落としていることに気づいた。「意味」とは、単なる記号そのものに内在するのではなく、人間がそれに関連づける概念や解釈…

#41 歌の身体性

歌を聴くこととその歌の歌詞を読むこととは全く異なる体験だ。歌 は { 歌詞 , 声 , メロディ, 振動 } といった要素で構成され、歌詞を読むと行為には声、メロディやリズム、振動が欠落する。 欠落する要素 声: 音色や抑揚が持つ非言語的な感情情報。 メロデ…

#39 紅茶

土鍋をした後の鍋を洗い、水を沸騰させる。その沸騰水で紅茶を作る。紅茶からうっすら鍋の匂いがするがほとんど気にならない。これは紅茶の起源に近しいものがある。 ヨーロッパでは中世から近代初期にかけて、都市部の水源は汚染されていた。家庭ごみや排泄…

#38 デスクスピーカー

デスクをスピーカーにできないか。例えばギターのような原理で中空構造のある木製のデスクを作ると、机全体から音が聞こえる。今日はそんな妄想を展開する。 デスクを実際にスピーカーとして機能するためには、音波を効率的に発生させるためのいくつかの要素…

#37 考える木

木の分岐構造は自然界に広く存在するパターンであり、人間はその木というオブジェクトを抽象化し枝の分岐構造を見出した。木の物理的な形状を「根・幹・枝・葉」といった階層に分解し、それを情報構造の「ルート・ノード・エッジ・リーフ」に分解した。この…

#36 記号接地問題と漢字の世界観

「#33 感覚とリンクする言語の可能性」で「オノマトペ的な記号を設計し直接感覚にアクセスできるようにすることで意味理解が容易になる言語が構築できるのではないか」と考察した。直接感覚にアクセスできる記号が実はみじかにあるこに気づいた。漢字である…

#35 ⚪︎⚪︎版の◻︎◻︎

「#34 本版SAMANSA」で本版のショートコンテンツについて考えてみた。その記事を書いているときに使った 「⚪︎⚪︎版の◻︎◻︎」 というタイトルをつけたがこれは発想のときに使えそうだと感じた。 「◻︎◻︎」にはすでに世の中にあるものやサービスを入れる。 「⚪︎⚪︎…

#34 本版SAMANSA

読書は敷居が高い。まとまった時間、静かな環境、精神的な余裕。これらが揃って初めて読書が一つの選択肢になる。映画も同様で腰を据えて長時間作品に向き合うことは難しい。SAMANSAは世界中の良質で面白いショート映画・ドラマ・ドキュメンタリーを発掘し、…

#33 感覚とリンクする言語の可能性

「#25 完全言語の妄想」でオノマトペを応用した言語開発の可能性について述べた。オノマトペと記号接地問題について思うことを書いてみる。 抽象的な記号(例えば、言語や数字)は、それだけでは意味を持たず、外部の世界との対応付けが必要だ。記号や言葉が…

#32 自由意志と記号の関係について

「#30 記号が世界を侵食する」の最後に記号と自由意志について触れたが、自由意志について大問題があることがわかった。そもそも僕たちは意思を持っているのかという前提が揺らぐ記事に出会った。国分さんは行為の原因を意思という概念で単純化することに問…

#31 テキストに魔法をかける方法

Swagger*1とMarkdownにはどちらにも、「単純なテキストフォーマットに魔法をかけて、驚くほど多機能で直感的なものに変える」という共通項が存在する。MarkdownやSwaggerがもたらしたのは、単なる技術的な効率化ではなく、「直感的な使いやすさ」だ。「テキ…

#30 記号が世界を侵食する

現代社会では、記号は単なる言語や文字の枠を超えて、広告、メディア、ブランド、さらには社会的な儀礼や行動規範として、私たちの生活全般に浸透している。こうした記号は、私たちの認知や判断に大きな影響を及ぼす。記号が日常的に私たちの世界を形作るこ…

#29 未知への好奇心

見えないものとアート 素朴な疑問 アルゴリズムの設計 見えないものとアート 新宮晋氏は自身の彫刻について「目に見えない自然のエネルギーを見せる装置」だと表現している。*1 「私たちが生きているのは、宇宙から見れば地球の大気の一番底です。そして、な…

#28 解釈学的循環的理解

思考プロセスの内部観測と理解関数の定義 解釈学的循環を理解関数に組み込む 各ステップの詳細と解釈学的循環の反映 1. 類推(部分, 全体) 2. 統合(部分, 全体) 3. 仮説(全体 -> 部分) 4. 検証(部分 -> 全体) 5. 内部表現の更新(部分 <-> 全体) 思考プロセス…

#27 「りんご」を理解するということ

意味を理解するということはどういうことか。「りんご」という音声や文字を聞いたり見たりすることで、その言語記号が識別される。この言語記号を「赤くて丸く、甘くて硬い果物」という観念やイメージ、さらにはその果物が持つ文化的・社会的な文脈(日本で…

#26 「木製のMacBook」という思考実験

1. 再構築の構造 健康は損なって初めてその価値を認識できる無形資産だ。健康を考える上で、動物性食品との付き合い方は重要だ。私は動物性の食品を控えるために、例えば、ハンバーグの肉だねにおからや豆腐、豆腐パウダーなどを混ぜる。肉の量を抑えれるだ…

#25 完全言語の妄想

言語と思考 言語設計 人工言語 最後に 言語と思考 言語によって思考や認知、世界の捉え方は異なるのか。この問いを扱う仮説に、サピア=ウォーフの仮説や言語相対論が存在する。僕たちは生まれる場所を選べない。生まれ落ちた場所の言語を学び、文化に触れ、…

#24 学びとチュートリアル

チュートリアルを分解する プログラミングには言語の知識だけでなくライブラリやフレームワークの幅広い知識が欠かせない。そこで大事になってくるのが学習効率であり、学習効率を高めるためる一つのツールがチュートリアルである。ここでは良いと感じたチュ…

#23 仮説的な存在

本に書かれていることは世界の一部でしかない。本にかけることは限られている。手に持って読めるという物理的な制約、需要や供給、コストといった経済的な制約。さまざまな制約をクリアしたほんのわずかな一部の情報たちが本という形を得る。 本に入りきらな…

#22 知能の身体性

スーパーでカニが並び出した。蟹味噌の値段を見ながら蟹味噌って脳みそじゃないことを思い出した。仮に蟹味噌が脳みそだとして、その脳みそを食べると食べた対象の思考が乗り移る科学現象が実在するのだろうかと思い耽った。思考を食べ物として摂取するとい…