1. 再構築の構造
健康は損なって初めてその価値を認識できる無形資産だ。健康を考える上で、動物性食品との付き合い方は重要だ。私は動物性の食品を控えるために、例えば、ハンバーグの肉だねにおからや豆腐、豆腐パウダーなどを混ぜる。肉の量を抑えれるだけでなく、植物性のタンパク質も取れるので一石二鳥だ。この「混ぜてかさ増しする」方法で作られたハンバーグはハンバーグと言えるのだろうか。最先端のあらゆる科学技術を総動員して肉を全く使用せずに作られたハンバーグはハンバーグと言えるのだろうか。ハンバーグが持つ情報(味、大きさ、色、形、匂い、食感など)を私たちの脳内で再現できればそれはハンバーグを食したと言えるのだろうか。「本物とは何か?」。例えば、「音楽」とは、楽器を演奏して生み出される音なのか、それとも私たちが心で感じるメロディやリズムなのか。録音された音楽が音楽であるならば、仮想的なハンバーグの再現も「本物のハンバーグ」になりうる。その中で、
{同じ情報を持つオブジェクト}を{なんらかのメリットが伴う方法}で再現する
という論理構造に面白さを感じた。この図式がすごいのは、オリジナルの再現を通して新たな価値を生み出していることだ。この構造を詳細に書くとこんな感じになる。
1.1 情報の抽出
オリジナルのハンバーグが持つ味、香り、食感といった感覚的な情報を「データ」として抽出し、それらを数値化・モデル化する。
1.2 情報の再現
抽出したデータを基に、別の素材や手法(植物由来の成分や培養技術、あるいはバーチャルな手法)を用いて、元のハンバーグと「同じ情報」を持つ新しいオブジェクトを生成する。
1.3 価値の付加
再現されたオブジェクトが、従来の方法と比べて何らかのメリットを持つこと。例えば、環境負荷の軽減、コスト削減、健康への良い影響など。
2.「木製のMacBook」という思考実験
ハンバーグの妄想から見出した図式を使って、「木製のMacBookを作る」という思考実験を行なってみる。従来のシリコン半導体を用いるのではなく、木という素材の物理的・化学的特性を活かして、新しいタイプの計算機構を生み出すという発想だ。これは単なる「代替」ではなく、「素材の性質を再解釈し新しい価値を見出す」エンジニアリングだ。
2.1 木の導電性や細胞構造を利用
木材は本来絶縁体だが、特殊な処理を施すことで導電性を持たせることが可能だ。さらに、木の細胞構造や繊維の配置を活用し、情報の伝達や演算に利用できるかもしれない。木の組織が持つ自然のパターンや、通水性・通気性を利用した「流体論理回路」など、新たな物理化学的bit演算機構の開発が可能かもしれない。
2.2 環境に優しい設計
シリコン半導体の製造には多くのエネルギーが必要だが、木材を基にした新しい計算機構が開発できれば、より環境に配慮したコンピュータが実現できる。廃棄後も自然に還る素材であれば、ライフサイクル全体で持続可能な設計が可能だ。
2.3 情報処理の新しいパラダイム
現在のコンピュータはシリコンチップ上で電気的に情報処理を行っていますが、もし木材が持つ性質を活かして、異なる物理現象(例: 熱、湿度、光の透過など)を利用した計算方法が開発できれば、新しいコンピューティングの形が生まれる可能性がある。例えば、木の年輪のパターンを情報のストレージや暗号化に利用する、あるいは木の化学反応を使って論理ゲートを構築するなどのアイデアだ。
3. 再構築の可能性
「動物性食品を使わないハンバーグ」も「木製のMacBook」も同じ構造を持っている。つまり、本来の素材を使わずに、異なる素材や手法で同じ体験を再現しつつ、新たな価値を生み出すことが共通のテーマとなる。
ハンバーグの場合:肉の代わりに植物性の素材を使って、味や食感を再現しつつ、環境への負荷を減らす。
木製のMacBookの場合:金属やシリコンを使わず、木の特性を活かして、同じ機能を異なる素材で達成する。
これらの例に共通しているのは、「素材の持つ可能性を最大限に引き出し、異なるアプローチで同じ価値を再現しつつ、新たなメリットを生み出す」ことだ。